Kassyの試写会映画生活

主に試写会メインで新作の映画についての感想を残していきます。

「存在のない子供たち」子供達が強く生き抜く様が胸を打つ

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監督:ナディーン・ラバキー

『キャラメル』などのナディーン・ラバキー監督が、中東の社会問題に切り込んだドラマ。主人公の少年が、さまざまな困難に向き合う姿を描く。ラバキー監督も出演するほか、ゼイン・アル・ラフィーア、ヨルダノス・シフェラウ、ボルワティフ・トレジャー・バンコレらが出演。第71回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞したほか、第91回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。

 

元シリア難民である子役の男の子が主役ゼインを演じているのだが、栄養の行き届いていないような細さでまず胸が詰まる。
地獄のような家庭環境で育ち、ある出来事で思い立って家出をし、それからお世話になった人がまたエチオピアからの難民で…と、もうなんというか社会問題のオンパレード、数珠つなぎである。

そんな小さな男の子が、更に小さな赤ん坊をお世話していく様は微笑ましくも更に胸が詰まる。どんどん過酷な状況になってもなんとかしようともがく様は、ジャンルは違うが「火垂るの墓」を思い出してしまった。

また、映画の中で身分証のないものは虫ケラやゴミのように扱わられ、貧困にあえいで水と砂糖しか飲めない事もあると涙ながらに語られていた。
そこで想起したのは先日見た「プライベート・ウォー」で語られていたシリアの戦争下の中、子供たちは砂糖と水で飢えをしのいでいるという話だった。状況の違いはあれど、子供たちを同じような環境下に置いてしまっているのだ。
それのみならず親は子供たちに対してさらなる非人道的な扱いをするわけだが、ゼイン少年はそんな親を産んだ罪で訴える。
貧困から抜け出す事は容易ではないのに、なぜ無責任に子供を作るのか…
親を痛烈に批判していて痛快ではあるが、そこに至る過程を目の当たりにしているだけに、また更に胸が詰まる思いだった。

遠いレバノンで、まるで日本とは関係ないと思う人もいるかもしれないが、見ていて思い出すのは、「誰も知らない」や「万引き家族」などの社会から見捨てられたインビジブルピープル達の話である。
権利を持たない、見捨てられた人達はどこの国もいる事について考えさせられる。
それだけのリアリティを持った作品であった。

ラストの表情だけが、ただ救いだった。

 

お気に入り度:★★★★★