「楽園」田舎の集落の闇。そこに楽園はあるのか
監督:瀬々敬久
主演:綾野剛
『悪人』『怒り』などの原作者・吉田修一の短編集「犯罪小説集」の一部を、『64-ロクヨン-』シリーズなどの瀬々敬久監督が映画化。ある村で起こった幼女誘拐事件、少女行方不明事件、養蜂家にまつわる事件を通して、人々の喪失と再生の物語が描かれる。少女行方不明事件の犯人だと疑われる主人公を演じる綾野剛をはじめ、NHKの連続テレビ小説「とと姉ちゃん」などの杉咲花や『64-ロクヨン-』シリーズで主人公を演じた佐藤浩市らが共演する。
2019年10月18日公開。
吉田修一さんの短編集、犯罪小説集の中の「青田Y字路」と「万屋善次郎」を組み合わせて作られた作品となっている。
ある田舎の集落で小学生の女児がいなくなった事を発端に、限界集落の闇、田舎の閉ざされた中だから起こる事件に心痛める作品だ。
しかしながら、瀬々監督らしい抑揚のないトーンでのエピソードの羅列の仕方にやや物足りなさも感じてしまう。
同じ原作者であり似たようなテーマを扱っている「怒り」と比較してしまうと、どうしても…
物語の組み合わせ方、登場人物の登場するそれぞれの意味、エピソードの取捨選択に疑問符がつく。
それぞれが話しているセリフが私には一方通行、話したい事を話しているだけで全然会話になっていないように感じた。
それはラストになる程顕著になってくる。
現実に起こったやるせない事件をモチーフにした話だけに、思いの深さはあるものの言葉にしてしまうとなんだかラストの締め方が残念に感じてしまった。
タイトルの楽園は瀬々監督の発案との事。
登壇した俳優陣は「楽園」というタイトルにある種救われたとおっしゃっていた。
人は楽園だと思ってその土地に住むけれど、楽園にするかどうかは土地ではなく人次第なのだろう。
気になったのはエンドロールの曲の入り方。かなり間があるが、間髪入れず上白石萌音さんの第一声にした方が良かったのでは。